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  • Regenerative Strategy 2026年6月8日 📖 12分 sailabo-admin

    ウズベキスタンと静岡の小学生が出会った日――はじめての国際交流授業

    2026年5月26日、株式会社サイラボが企画した一つの授業が、静岡とウズベキスタン・タシケントをリモートでつないだ。

    きっかけは「非対称」への違和感

    ウズベキスタンの若者たちは、日本のことをよく知っている。アニメ、文化、歴史。日本語を専攻として選ぶほど、日本への関心は深い。
    一方、日本の子供たちにとって「ウズベキスタン」は、地図で探すのも難しい、まだ見ぬ国だ。
    この非対称性を、少しでも縮めたい。それがこの授業を生み出した動機だった。
    実は、これは子供達に限らず大人同士でも存在する非対称性。

    出会った二つの学校

    ウズベキスタン国立世界言語大学(タシケント)

    1949年にタシケント外国語教育大学として創設され、1992年に現在の形に再編された、ウズベキスタンを代表する外国語専門の国立大学だ。学生数は約22,500名、英語・フランス語・ドイツ語・日本語・韓国語・中国語など17言語を学べる。
    日本語教育の歴史は1996年に始まり、2018年には「日本語理論・実践学科」が独立した学科として発足。現在26名の教員を擁し、JLPT(日本語能力試験)N1〜N2レベルの深い習熟を目標に掲げている。東洋大学・筑波大学など日本の複数の大学とも学術交流協定を締結しており、日本との繋がりは研究・教育の両面で着実に育まれてきた。
    おいらも、ゲストティーチャーとして何度か、大学で授業させて頂いた。今回はそんな縁もあり企画が実現。
    今回の授業に登場した学生たちは、その夜間コースの3年生たち。「日本語で、日本の子供たちに話しかける」という体験は、彼女・彼らにとっても初めてのことだった。

    https://uzswlu.uz/en

    静岡あたらしい学校(静岡市葵区・通称:あた小)

    静岡市北部「オクシズ」の玄関口、葵区牛妻の古民家を拠点とする、NPO法人運営の認可外小学校だ。2018年に開校した静岡市初のオルタナティブスクールで、小学1〜6年生約15名が通う。
    理念の核は「子ども自身が持つ学びの欲求を信じる」こと。人との違いを認め合い、自然・地域とのつながりを大切にしながら「生きる土台」を育む。カリキュラムは基礎学習に加え、古代ギリシャ語「スコレー(暇)」を語源に持つ「スコーレ(探求の時間)」と「ゲストティーチャータイム」を柱とし、畑での米作り・野菜作り・ブッシュクラフトなど、生きた学びが日常にある。英語の授業がない代わりに、今回のような「本物の外国語体験」が飛び込んでくる。
    今回の授業も、その「ゲストティーチャータイム」の精神そのものだった。

    https://www.atasho.com

    授業の設計

    主催: 株式会社サイラボ
    形式: オンラインリモート授業(日本・静岡 ↔ ウズベキスタン・タシケント)
    先生役: ウズベキスタン国立世界言語大学 日本語学科 3年生(5名)
    生徒役: 静岡あたらしい学校の子供たち
    設計はシンプルだ。ウズベク側の大学生が「先生」となり、日本語のスライドを使って自分の出身地やウズベキスタンの文化を紹介する。発表後は日本の小学生との質疑応答(Q&A)という流れ。
    ポイントはウズベクの学生が日本語で語りかけるという構造だ。小学生たちにとっては、画面の向こうから届く彼女・彼らの「日本語」が、もっとも生きた外国語体験になる。

    彼らはこんな世界を見せてくれた

    学生の1人、アジズベク(ナヴォイ州ヌロタ出身)さんは、故郷の聖なる泉「チョシュマ」を紹介した。透き通った水、神聖な魚、千年の歴史を持つモスク。「ヌロタは歴史と自然が有名な町です」と語る彼の言葉は、静岡の子供たちには異世界のように響いたはずだ。
    サマルカンド出身のグルユズさんは、春になると村で作る郷土料理「クックソムサ」を紹介した。「イスマロク」という草を使った春の味。家族の写真、祖父母の年齢まで日本語で伝えた。そして「これは何だと思いますか」と問いかけながら見せた民族衣装と美しい頭飾りのアクセサリーは、子供たちの目を輝かせた。
    また別のサマルカンド出身のガウハルさんは、レギスタン広場の壮大な写真とともに「1000年以上前の建物があります」と語った。現代の日本の子供たちには、時間のスケールそのものが驚きだっただろう。

    その日、何が起きたか

    Screenshot

    授業が終わった時、ウズベクの大学生たちは満足感で顔が輝いていたという。
    ウズベク側の担当先生によると学生達は直前まで極度に緊張していたとのこと。そもそもウズベク人が緊張するというのは珍しい。それだけ「ちゃんとやり遂げたい」という気持ちが強かったのだと思う。おいらからは、「兎に角、こんな機会はそうそうないので、まずは楽しくやりましょう」という事前メッセージで、その緊張は解けた。
    日本の小学生たちは「ウズベキスタンに行ってみたい」と言った。授業の前まで、その国の名前すら知らなかったかもしれない子たちが。
    大学側の教員は「学生が日本の子どもと交流できる機会はほとんどない。リモートでここまで臨場感ある交流ができるとは思わなかった」と評価した。
    日本側の先生は「海外との交流授業は機会がなかったが、リモートでこれができるなら継続的な授業化を模索したい」と語った。

    本音が飛び交ったQ&Aセッション

    発表が終わると、場の空気が一気に変わった。用意された質問ではなく、子供たちの素直な好奇心が次々と飛び出した。

    アニメが架け橋になった

    「ナルトは知っていますか?」という問いに、ウズベクの学生たちは即座に反応した。ナルトはウズベキスタンでも大人気だ。「魔女の宅急便は?」「知っています!」——スタジオジブリの名前が出た瞬間、画面の両側で顔がほころんだ。
    「日本の曲で流行っているものはありますか?」という質問には「100万本のバラ」という意外な答えが返ってきた。ロシア語圏との文化的つながりが色濃いウズベキスタンらしい回答だ。
    ここで面白い発見があった。日本側の大人の先生が「そういえばInstagramのリールに昨日ウズベキスタンのヒップホップのMVが流れてきたんですが、流行っていますか?」と聞いた。学生たちは「はい、すごく流行っています!」と目を輝かせた。アニメという共通言語から始まった会話が、音楽へ、SNSへと自然に広がっていく。世界はもうすでに繋がっている——その実感が、画面越しにじわりと広がった瞬間だった。

    即席ウズベク語講座

    「ありがとうはウズベク語で何と言いますか?」——誰かの問いかけで、即席の語学講座が始まった。「ラフマット(ありがとう)」「ヤクシミシズ?(元気ですか?)」を子供たちが一斉に繰り返す。「合ってましたか?」と恐る恐る確認する子供たちに、学生たちが「上手です!」と返す。5分前まで知らなかった言葉が、笑い声と一緒に静岡の教室に広がった。

    ウズベク側からの逆質問も

    後半はウズベク側からも質問が飛んだ。「給食は自分で作っていますか?」——オルタナティブ小学校ならではの「はい、自分たちで作っています」という答えに、学生たちが驚く。「犬を飼っていますか?名前は?」という質問には「紬(つむぎ)と糸(いと)です」と返ってきた。学生たちが名前を聞き返し、繰り返す。小さな固有名詞のやりとりの中に、確かな親密さが生まれていた。
    「学校で英語を教えますか?」「この学校では英語の授業はありません」——するとウズベク側の学生が笑いながら言った。「じゃあ、明日から私たちが教えます!」。笑いの中に、でも本当の意味での「繋がりたい」という気持ちが滲んでいた。

    正直なラスト

    セッションの締め、おいらから問いかけた。「今日ウズベキスタンが好きになった人!」——最初、手はなかなか挙がらなかった(笑)。でも「遊びに来てください」「静岡の友達になりました」という言葉が自然に飛び交い、帰りのバスの時間を気にしながらも「まだ話したい」という空気のまま、その日の授業は終わった。

    第一回を終えて見えてきたこと——次への展開

    今回のQ&Aセッションは、言ってみれば完全な即興だった。子供たちは何も準備していない。ウズベクの学生たちも、どんな質問が来るか知らない。それでもこれだけの豊かな会話が生まれた。
    では、少しだけ準備があったら、どうなるだろう。
    おいらが次に考えているのは、Q&Aを「偶然の化学反応」から「設計された深化」へと育てていくこ。具体的には:
    双方への事前素材づくりとして、次回の授業前に「聞いてみたいこと」「伝えたいこと」を双方が整理して持ち寄る。日本の子供たちならば「ウズベキスタンの学校って休み時間に何してるの?」「好きな食べ物は?」。ウズベクの学生たちならば「日本の子供が毎日どう過ごしているか」を知りたがっていた。この「問いの種」を事前に交換しておくだけで、会話の密度は格段に上がる。このあたりは、パーマカルチャーデザイナーとして、それぞれの文化の交流を子供、若者視点で化学反応させる、そんな仕掛けに繋げていきたい。
    テーマを絞った回を設けることも有効だ。「食」の回、「音楽」の回、「学校生活」の回——テーマを決めて双方が写真や動画などの素材を持ち寄れば、発表とQ&Aの境界が溶けて、もっとフラットな対話の場になる。
    そして言葉の壁を逆手にとる。今回の即席ウズベク語講座は偶然生まれたが、「今日は一つ相手の言葉を覚えて帰る」というミッションを最初から設定してもいい。言葉を覚えることは、文化を体に刻むことだ。
    「非対称性を縮める」という最初の目的は、一回の授業では達成されない。でも、回を重ねるごとに、子供たちの中に「ウズベキスタンに友達がいる」という事実が積み重なっていく。それがいつか、世界の見え方そのものを変える。

    あとがき

    リモートが当たり前の時代になって、「どこにいても繋がれる」という言葉が陳腐化しつつある。でも、この日の授業は違った。
    タシケントの大学生が、自分の故郷の泉の話を日本語でする。静岡の小学生がそれを聞いて、知らない国に心を向ける。犬の名前を聞き合う。知らない言葉を一緒に発音して笑う。この具体的で小さな接触の積み重ねが、世界のあり方を少しずつ変えていく。
    SLOCの原則でいえば、まさに「Small・Local・Opened・Connected」だ。規模は小さい、場所はローカル、でも開かれていて、つながっている。
    この授業は、一回限りのイベントではなく、継続するプログラムになっていく。次は何人の子供たちが、まだ見ぬ国に友達を持つだろうか。

    株式会社サイラボ
    代表 小俣伸二(Shinji Omata)

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